まっすぐな瞳
仕事で訪問した先の独居女性。
結婚して直ぐに旦那を仕事で亡くし、その後妊娠が分かり、シングルマザーで育てたが、娘がイジメにあう。娘は亡くなった旦那の里に引き取られ、その後離れ離れで過ごした。
娘は素敵な方と出会い、結婚する。
しかし、娘は自死を選んだ。
友達みんなに手紙を残し、母親には亡くなる前日に「普通の会話」を残した。
それから、うつ病になった。
やっと13回忌を迎え、少しずつ落ち着いたと言われた。
「あんたの声がな、娘の声に似てるんよ。電話くれた時は娘からかと思ったわい。」
「なんか嬉しくてね。娘と変わらない子に会えて」
そう言ってから、辛かったことを話し出す。訪問時間は1時間程度しかない仕事。相談員ではないから仕方ないのが悔やまれた。
別れ際に私の目をまっすぐ見つめる。
「また会おうね。」
手を握り、再度私の目をまっすぐに見つめる。
「元気でね。無理しないようにね。」
そうしか言えなかった。
次の訪問先に向かう時、雨がいつもより冷たかった。
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